「マーケティングをどこまで外注すべきか」。経営者や事業部長の方から、よくいただく相談です。

私の答えはシンプルで、まず見るのは「社内に、マーケティングの全体を設計できる人がいるかどうか」です。全体を設計できる人がいないまま施策だけを外に出しても、成果にはつながりにくい。その場合は、まず全体の設計から相談し、実行の手も足りなければ、設計から実行までをまとめて任せるのが現実的です。社内では、「方針と意思決定」と「KPIの確認」だけを残す。

私はB2Cの店舗ビジネスとB2BのSaaSでマーケティングに携わり、部門の立ち上げも経験しました。今はFSTOとして外から支援する立場にいます。発注する側と受ける側の両方を経験した立場から、外注の判断基準と任せ方をお話しします。

マーケティングは外注すべき?まず見るのは2つの軸

どこまで外注するかを考えるとき、まず見るのは「全体を設計できる人がいるか」と「実行の手が足りているか」の2つの軸です。そのうえで、目標や予算に合わせて任せる範囲を考えます。

ここでいう「全体の設計」とは、誰に、何を、どう届けるかを決め、どの数字で成果を測るかを定め、そのうえで施策に優先順位をつけることです。広告やSNS、サイト改善といった個別の施策は、この設計があって初めて一つの方向にそろいます。

2つの軸を掛け合わせると、選択肢は4つに分かれます。

外注範囲を考える2つの軸
実行の手が足りている実行の手が足りない
全体を設計できる人がいる① 内製で続ける② 実行だけ外注する(代行)
全体を設計できる人がいない③ 設計だけ外部に相談する(コンサル)④ 設計から実行まで任せる(伴走)

①と②は、社内に設計できる人がいるので、足りない手を外から補えば回ります。難しいのは③と④です。特に③は注意が必要で、実行する人がいても、戦略を具体的な作業や優先順位に落とし込み、進捗を管理する役がいなければ、現場で使われないまま終わります。私自身、会社員時代に戦略が現場で使われないまま終わる場面を何度も見てきました(詳しくはFSTOを起業した理由に書いています)。

このあと紹介する、FSTOに相談に来る企業の3つのパターンも、設計や実行の体制に課題があるケースです。

外注の範囲は、体制から考える
図解:外注の範囲は、体制から考える

外注を考えたほうがいい企業の5つのサイン

次のようなサインが当てはまるなら、今の社内体制を見直し、外部の力を借りるか検討してみてください。

1. 施策は増えたのに、成果が出ない

広告、SNS、メルマガ、セミナーとやることは増えているのに、売上や新規獲得につながっている実感がない。施策同士をつなぐ設計がないときによく起きます。

2. “マーケティング”が他の業務との兼務になっている

営業や広報、企画の担当者が空いた時間でマーケ業務を担っている状態です。本業が忙しくなると、マーケは後回しになりやすくなります。

3. 代理店やベンダーの言いなりになっている

提案を受けても、それが自社の目標に合っているか判断できず、そのまま通してしまう。外注先が悪いのではなく、発注する側に判断の軸がない状態です。

4. 目の前の課題だけにフォーカスしがち

今月の問い合わせ数や今週の投稿に追われ、半年先・1年先に向けた手が打てていない。全体を見る人がいないと、どうしても短期の対応が優先されます。

5. 経営者がマーケティングを抱えている

細かい広告の判断や制作物の確認まで、経営者が自らやっている状態です。経営者の時間がマーケに取られるほど、本来やるべき意思決定が遅れます。

マーケティングを外注するメリット・デメリットは?

最大のメリットは、採用や育成を待たずに経験者の力ですぐに動き出せることです。一方でデメリットもありますが、任せ方を工夫することで抑えられるものもあります。

外注のメリット
メリット詳細
すぐに動き出せる採用・育成の時間を待たずに、経験のある人が設計と実行に入れる
社内の人が本業に集中できる兼務で抱えていたマーケの実務負担を減らせる
社外の目で優先順位を見直せる社内では当たり前になっているやり方を、他社や他業界の経験と比べられる
デメリットと対策
デメリット対策
ノウハウが社内に残りにくい定例で「なぜそう判断したか」まで共有してもらう。データや資料は自社に残る形で進める
中で何が起きているか見えにくいKPIと進捗を、毎月同じ形で報告してもらう
費用がかかる何をもって成果とするかを始める前に決め、範囲を絞って始める
社内の当事者意識が薄れる「方針と意思決定」は社内に残す(後述)

外注の形は3つ:施策ごとの代行・戦略だけのコンサル・部門ごとの伴走

外注とひと口に言っても、任せる範囲によって3つの形があります。自社が先ほどの②〜④のどれにあたるかをもとに、合う形を考えます。

外注の3つの形
形任せる範囲向いている企業注意点
施策ごとの代行広告運用、SEO、SNSなど個別の施策全体を設計できる人が社内にいる(②)施策ごとに企業が分かれる場合も、社内で全体を調整する役を明確にする
戦略だけのコンサル戦略・計画の立案実行の手は社内にある(③)実行担当者がいても、戦略を作業・優先順位に落とし込み、進捗を管理する役が必要
部門ごとの伴走設計から実行・改善まで設計も実行も手が足りない(④)社内に方針と意思決定を残さないと「丸投げ」になる

表は横にスクロールできます。

FSTOが提供しているのは3つ目の形です。外部の企業として納品するのではなく、「ほぼ社員」としてマーケティング部門に入り、設計から実行までを引き受けます。

任せ方は、3つの形
図解:任せ方は、3つの形

外注しても成果が出ない企業の共通点は?

私が相談を受ける中では、外注先の質だけでなく、「全体をまとめる役」がいないことが課題になっているケースをよく見ます。

よく見るのはこんな状態です。代理店やベンダーは、それぞれ自分たちの指標で施策を提案してきます。広告ならクリックや獲得単価、サイトならアクセス数、SNSならフォロワー数。どれも間違ってはいませんが、発注する側がそれをうまくマネジメントできていないと、各社の数字は良くなっても、事業としての成果にはつながりません。

共通点をまとめると、次の3つです。

外注しても成果が出ない企業の3つの共通点
共通点起きていること
指標が施策ごとにばらばら事業の目標から各施策の数字がつながっていない
発注が施策単位で、つなぐ人がいない広告は広告、サイトはサイトと分かれ、お客さまの流れとして見る人がいない
社内に最終判断する人がいない提案がそのまま通り、方針がぶれ、軌道修正もしにくくなる

「施策は増えているのに、成果が出ない」という状態は、こうした要因が重なって起きることがあります。

施策の数字を、事業の目標へ
図解:施策の数字を、事業の目標へ

外注しても社内に特に残すべき2つの役割

部門ごと任せる場合でも、「方針と意思決定」と「KPIの確認」の2つは、特に社内に残してください。あわせて、窓口や予算の承認、情報共有・データ管理の進め方も、始める前に合意しておきます。

1. 方針と意思決定

組織が進むべき方向をぶらさないための役割です。外注先は専門的な提案をしますが、それを自社の方針や目標に照らして「やるか・やらないか」を最終的に決めるのは、発注する側です。ここまで外に出してしまうと、本当の意味での「丸投げ」になります。

2. KPIの確認

経営、事業部、現場と、レイヤーごとに追っている数字は違います。たとえば経営は売上や利益、事業部は新規獲得数、現場は問い合わせや予約の数を見ています。外注先からの報告を受け取るだけでなく、それぞれの立場から見えている数字をもとに、外注先に要望を上げていくことが大切です。

逆に言えば、施策の設計や実行、日々の改善は任せて構いません。

特に社内に残す、2つの役割
図解:特に社内に残す、2つの役割

FSTOに相談に来る企業の3つの体制と、外注先選びの視点

実際にFSTOに相談をいただく企業は、大きく3つのパターンに分かれます。設計や実行の体制に課題があるという点が共通しています。

パターン1:マーケティング部はあるが、経験の浅いメンバーだけで手探り

部署も担当者もいるものの、経験が少ないため、何が正解かわからないまま動いている状態です。外注先の提案を判断する軸も持ちにくく、代理店の提案をそのまま受け入れやすいパターンです。

パターン2:営業が強い企業が、マーケティングにも力を入れ始めた

これまでは営業力で伸びてきたものの、新規の取引先を安定して増やすためにマーケティングにも力を入れたい。ただ、社内にマーケの経験者がおらず、何から手をつければいいか分からないという状態です。

パターン3:新規事業を始めたが、担当者が本業で手一杯

新しい事業やサービスを立ち上げたものの、マーケティング担当者は本業の仕事で手一杯。新規事業の集客が後回しになっている状態です。

選ぶときに確かめたいのは「やりきる」と「進めてくれる」

外注先を選ぶときは、施策の知識だけでなく、「最後までやりきるか」「迷っている状態から動かしてくれるか」も大切です。提案の質と同じくらい、この2つを確かめておくことをおすすめします。

提案の先まで、確かめる
図解:提案の先まで、確かめる

自社はどれ?外注判断チェックリスト

自社の設計や実行の体制を振り返るために、当てはまる項目を確認してみてください。

☐ マーケティングの年間計画や目標の数字が決まっていない

☐ 施策は増えているが、何が成果につながっているかわからない

☐ マーケ担当者がほかの業務と兼務している

☐ 社内にマーケティングの経験が浅いメンバーしかいない

☐ 代理店やベンダーが複数あり、提案をまとめる人がいない

☐ 外注先の報告を受けても、良いのか悪いのか判断できない

☐ 経営者がマーケの細かい判断まで自らしている

☐ 新規事業や新サービスの集客を、既存の担当者が兼ねている

☐ 目の前の対応に追われ、半年先の計画を考えられていない

☐ 採用も検討したが、任せられる人が見つかっていない

当てはまった数だけで、外注の範囲を決める必要はありません。「全体を設計できる人がいるか」と「実行の手が足りているか」に戻り、どちらを外部に補ってもらうかを考えてみてください。

よくある質問

Q. 小さな企業でもマーケティングを外注できますか?

できます。大事なのは企業の規模よりも、何を任せて何を社内に残すかです。マーケの担当者がいない企業ほど、設計から任せる意味は大きくなります。

Q. まず何から外注すればいいですか?

全体を設計できる人が社内にいるなら、手が足りない施策からで構いません。いない場合は、まず全体の設計から相談するのが近道です。施策から始めると、あとで施策同士をつなぎ直す手間がかかります。

Q. 外注すると、社内にノウハウが残らないのでは?

任せ方次第です。定例で「なぜそう判断したか」を共有してもらう、データや資料を自社に残す、将来の内製化を見据えて役割を少しずつ社内に移す、といった進め方でノウハウは残せます。

Q. 成果が出るまでどれくらいかかりますか?

業種や施策、状況によって変わるので一概には言えませんが、FSTOでは半年〜1年のご契約でスタートし効果を見ていただいています。

まずは今の状況を一緒に整理するところから

「外注すべきかどうかもまだ決められない」という段階でも構いません。今の体制や目標を伺い、どこまで外に任せるのがいいかを一緒に整理するところから始めます。

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